Story1-⑧:近代的な制度や集団への帰属
「リスク社会」の到来は、社会的な問題に限る話ではありません。
私たち個人の生活や人生にもかかわってくる問題でもあるのです。
それを、ベックは「個人化」という言葉をつかって説明します。
人間は、近代化が進むと、封建的で伝統的な社会制度や価値観(たとえば差別的な身分制度、非科学的・非合理的な世界観、地縁・血縁で強く結ばれた村落共同体など)から解放されました。
人類は、個人の自由を手に入れたのです。
しかし、集団から解放されただけだとさまようばかりで、非常に不安定な状況におちいります。
そこで近代社会は、国民国家・福祉国家、階級・階層、会社、近代的な地域社会、近代家族(核家族)など新しい制度や集団をうみだしました。
そこに人びとは帰属することにより、安定した生活を維持することができるようになりました。
ただ、そのような新しくうみだされた仕組みは、いつまでも安定して存在しつづけているでしょうか。
近代社会は、近代化を進めるとともに、そのような仕組みを変容させてきました。
その結果、さまざまな問題が生まれ、うまく機能しなくなり、個人は改めて不安定な状況へおちいり、「リスク社会」を迎えることになったのです。