Story1-⑦:「リスク社会」の到来
チェルノブイリの原発事故が示しているように、私たちはいつ訪れてくるか分からない危険にさらされているのです。
その危険は国とか地域とか、その境界線を乗り越えておそってきます。
人間はみずからつくった最高段階の産物によって、リスクにさらされる社会に身をおいているのです。
近代化とともに発展した科学の力は、最終的には人間がコントロール(制御)できない作品を作りだしました。
何でも支配できる、何でもコントロールできるという人間の自信は、みずからがつくりだしたモノがうみだすリスクによって、打ち砕かれたのです。
すなわち、それは過信でしかなかったのです。
そして、このリスクは一部の人間が負うものではありません。
富裕者や権力者、貧困者などに関係なく、誰でもその危険にさらされるようになるのです。
それが、「リスク社会」です。
そして、リスク社会で明らかになった問題は、原発事故による放射能汚染だけではありません。
気候変動や環境破壊による災害の発生、グローバル化した金融市場の破綻、テロによる脅威、過剰な軍備拡大に対する不安など、さまざまな領域に広がっています。
一定の範囲におさまりきらない、いつおそってくるか分からないリスクに、誰もが現在さらされているのです。