2021-01-01から1年間の記事一覧

Story1-23:自分を再帰的に見つめ直す

〈本来あるべき姿の個人主義〉と〈行き過ぎた個人主義=利己主義〉のどちらの価値観を基盤において集団やネットワークが形成されていくかによって、二つの相反する社会が構築されます。 この事象は、「安定成長期」(第一次オイルショックからバブル経済崩壊…

Story1-22:二つの分かれ道

「低成長期」(バブル経済崩壊後)を迎えると、現実の生活と密接して生きていかなければならない流れが強くなっていきます。 その流れを背景にして、集団やネットワークの形成が行われる場合には、二つの分かれ道が存在します。 一つは「リアル密接社会」に…

Story1-21:目的のない若者の貯金

私が、現在の大学生のことで、ある事実に驚いたことがあります。 それは多くの学生が貯金をしているということです。 そして、その目的が何か明確にあるわけではなく、何となく不安だから、アルバイトをして通りあえず貯金をするという学生がいることです。 …

Story1-⑳:個人の再構築

人びとを安定へと導く、集団化、あるいはネットワーク化を進めていくうえで、まず取り組まなければいけないことがあります。 それは、個人の再構築です。 個人の価値観・倫理観を鍛え直すということです。 「安定成長期」(第一次オイルショックからバブル経…

Story1-⑲:新しい社会モデルへの挑戦

戦後の日本を振り返ってみると、「再埋め込み」のない状況が、現在の日本社会でも着実に進んできたと言えるでしょう。 そして、これからも間違いなく進展していくでしょう。 ウルリッヒ・ベックやアンソニー・ギデンズが唱える「リスク社会」「個人化」や「…

Story1-⑱:「モデルなき時代」に身をおく私たち

高度経済成長が終わりを迎え、「安定成長期」(第一次オイルショックからバブル経済崩壊までの期間)に入ると、徐々に個人と中間集団との関係が希薄になり始めます。 その流れが「低成長期」(バブル経済崩壊以降)に入ると、本格化します。この動きは、「再…

Story1-⑰:戦後の日本における「再埋め込み」

ウルリッヒ・ベックやアンソニー・ギデンズが言うような「再埋め込み」のない状況は、現在の日本でも進んでいるのでしょうか。 戦後の日本を振り返ることにより、確認してみましょう。 戦後の日本で、まず「脱埋め込み」と「再埋め込み」の動きが顕著にあら…

Story1-⑯:自己内省的な近代化

現在多くの人が、Facebook・Twitter・Instagram・blogなどのSNSを通じて、自分を語っています。 家族や会社の同僚など身近な人たちに、自分を語れないとなると、誰に語れば良いのでしょう。 今や、SNSという、まさしくその要望に応えてくれる媒体が存在しま…

Story1-⑮:「自分史」で語るしかない自己

アンソニー・ギデンズも、ウルリッヒ・ベックがいうように、「再埋め込み」のない状況が進展することを、つぎの内容で同様に主張しています。 伝統的で封建的な社会では、人びとは地域社会の集団や階級などの制度に組み込まれていました。 そこでの人生にお…

Story1-⑭:「再埋め込み」のない状況の進展

ウルリッヒ・ベックは、「再帰的近代化(第二の近代)」における「個人化」は、何らかの集団に「再埋め込み」されることのない解き放ちであると説明しています。 「再埋め込み」のない状況が進展するのです。 個人を守ってくれていた中間集団との関係は希薄…

Story1-⑬:「第二の近代」で「再埋め込み」は進んでいるのか?

近代化にともなう「脱埋め込み」から「再埋め込み」への動きについては、「単純な近代化(第一の近代)」と「再帰的近代化(第二の近代)」の二つの段階で説明しました。 「単純な近代化(第一の近代)」では、伝統的で封建的な制度や集団からの「脱埋め込み…

Story1-⑫:第二段階の「脱埋め込み」の発生

「単純な近代化(第一の近代)」で発生した「脱埋め込み」の状況は、近代化がさらに進むことにより、ふたたび生じます。 第二段階は「再帰的近代化(第二の近代)」によって発生した「脱埋め込み」の動きです。 ちなみに、アンソニー・ギデンズは、私たちの…

Story1-⑪:第一段階の「脱埋め込み」から「再埋め込み」へ

アンソニー・ギデンズは、近代化の進展にともなって、「脱埋め込み」から「再埋め込み」への動きが、二つの段階をへて発生したことを説明します。 まず、第一段階は「単純な近代化(第一の近代)」によってうまれた状況です。 18世紀から19世紀にかけての西…

Story1-⑩:「脱埋め込み」と「再埋め込み」

「再帰的近代化(第二の近代)」によって明らかになった社会変容の具体的な現象として、ウルリッヒ・ベックの「リスク社会」と「個人化」をみてきました。 ベックと同様に、「再帰的近代化論」を唱えるアンソニー・ギデンズが主張していることにも、耳を傾け…

Story1-⑨:「個人化」の進行

ウルリッヒ・ベックは、個人が、近代化によって新しくうみだされた社会階級・家族形態・職業集団などの集団から切り離されて解放されていく過程を「個人化」と呼んでいます。 現在、近代化によって新しく生みだされた中間集団(階級・階層、会社、地域社会な…

Story1-⑧:近代的な制度や集団への帰属

「リスク社会」の到来は、社会的な問題に限る話ではありません。 私たち個人の生活や人生にもかかわってくる問題でもあるのです。 それを、ベックは「個人化」という言葉をつかって説明します。 人間は、近代化が進むと、封建的で伝統的な社会制度や価値観(…

Story1-⑦:「リスク社会」の到来

チェルノブイリの原発事故が示しているように、私たちはいつ訪れてくるか分からない危険にさらされているのです。 その危険は国とか地域とか、その境界線を乗り越えておそってきます。 人間はみずからつくった最高段階の産物によって、リスクにさらされる社…

Story1-⑥:科学の発展の皮肉な結果

第二次世界大戦後に進展した「産業(工業)社会」は、さまざまな技術を開発して、私たちの生活を便利にする製品をうみだしてきました。 たとえば、テレビ、自動車、パソコン、スマホなど、あげだしたらきりがありません。 このように私たちが生活するうえで…

Story1-⑤:「再帰的近代化論」からのアプローチ

私たちは、いま、どうして自分の力のみで社会に立ち向かっていかなくてはならないような状況に、おちいっているのでしょうか。 その理由について、近代化がどのように進んできたかという視点から、明らかにしている研究者たちがいます。 そのなかから、ウル…

Story1-④:帰属関係のゆらぎの問題

「成長型社会モデル」の機能低下に伴い、当然のごとく、地域集団や会社・学校などの「中間集団」と、個人の関係にも変化が生じます。 「中間集団」が個人を守ってくれるという機能は、徐々に低下していきました。 個人と「中間集団」との信頼関係が崩れつつ…

Story1-③:「成長型社会モデル」の機能低下

1990年代に入ると、バブル経済が崩壊して、経済の安定成長に終止符が打たれました。 当時の日本社会を支えていたのは、経済が成長することを前提につくられた社会モデルです。 これを、「成長型社会モデル」と呼ぶことにします。 その代表的な仕組みとして「…

Story1-②:社会圏を形成する「中間集団」

「中間集団」は他人との交流の場です。 ここが家族とは大いに違うところです。 家族は親密圏を形成していますが、「中間集団」は社会圏を形成しています。 すなわち、「中間集団」は、社会性を身につけることが要請されている場所であり、そこで自分の存在を…

Story1-①:不安定な個人

現代社会において、個人の存在が、ますます不安定になっています。 その原因の一つとして、個人と「中間集団」との帰属関係の希薄化があります。 「中間集団」とは、個人と国家あるいは全体社会の中間にあって、両者を媒介する集団のことを言います。 代表的…